「Ostia Expansion PIRATES」はボードゲーム「Ostia」の拡張セットです。出身地と支援者というプレイヤーごとの能力がつき、ボード上に海賊船が登場します。プレイヤーは武器を集めたり、兵士を雇ったりして海賊を撃退しなければなりません。
「Ostia」の選択肢をさらに広げる拡張セットとなっています。
この記事はサンプル提供を受けて執筆しています。プロトタイプのため、実際のコンポーネントとは異なる場合があります。
Ostia(オスティア)について
まずは、もとのゲームであるOstiaについての紹介です。
Ostia(オスティア)は2~4人用のゲームです。古代ローマの港”オスティア・ポルトゥス”を舞台に、プレイヤーは大船団のオーナーとして商品や貴族たちに船を貸し、事業を拡大します。
Ostiaの特徴
Ostiaの大きな特徴は個人ボードにある「マンカラ」です。
マンカラ (mancala) は、アフリカや中近東、東南アジアにかけて古くから遊ばれている伝統的なゲームの総称です。いくつかの穴が開いていて、それぞれに決まった数の石が入っています。その中から1つを選び、穴にある石をすべて取り、隣の穴から順番に入れていきます。これを繰り返し、自分の穴の中に多くの石を入れたほうが勝ちです。
いくつかのボードゲームにはこのマンカラのシステムが取り入れられています。有名なゲームで言うと「トラヤヌス」と「クルセイダーズ」があります。
「トラヤヌス」では個人ボードに6つの皿とそれに対応したアクションが描かれています。その皿の中から1つを選び、時計回りに隣の皿に1つずつコマを置いていき、最後にコマを置いたところのアクションを実行します。
「クルセイダーズ」では同じように6つのウェッジがあり、その中から1つを選びます。この上にあるコマの数がアクション値です。同じウェッジ上にコマがたくさんあるほど、アクションが強力になります。
「トラヤヌス」では最後にコマを置いた場所のアクションを実行し、「クルセイダーズ」では最初に選んだ場所のアクションを実行します。
それに対して「Ostia」は最初に選んだ場所と最後に置いた場所の両方に意味があります。
最初に選んだ場所ではそこにあるコマの数だけ資源やお金を得ます。そのままコマを置いていき、最後に置いたところのアクションを実行します。
そのため、1回の選択で得られるものと、実行するアクションの両方が決定するようになっています。
ゲームの流れ
Ostiaでは個人ボードの六角形に6つのアクションが割り振られています。監督はオールマイティ的な存在のため、実際のアクションの種類は5種類です。
移動 | メインボード上の自分の船コマを進めます。止まった場所によって資源が得られます。ルートの終着点まで着くと、ゲーム終了時にもらえる得点が増えます。 |
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造船 | マンカラやメインボード上で使える船の数を増やします。 |
注文 | 指定数の麦+αを供給することで、得点や資源が獲得できます。 |
建築 | メインボード上に建築ディスクを置きます。そのとき建物コマを持ってきて個人ボード上に置きます。それによりアクションが強化されます。 |
交易 | メインボード上で自分の建築ディスクが置かれた港を近い、金貨を他の資源などに変えます。 |
監督 | 移動・造船・注文・建築のいずれかのアクションを行います。 |
手番を時計回りに繰り返し行い、誰かが以下の終了条件のうち1つを満たせば、スタートプレイヤーの右隣の人まで手番を行いゲーム終了です。
- 褒章トークンが褒章トラックの12のマスに到達
- いずれかのプレイヤーの船3つ以上が終着地に到達
- いずれかのプレイヤーが船をすべて建てきる
- いずれかのプレイヤーが建築ディスクを置ききる
- 共通サプライからアンフォラコマがなくなる
最終得点計算では、褒賞の数によって「建物」「船」「アンフォラコマ」の得点が変わってきます。
他にアイコンのセットコレクションやタイルからの得点などを合計して、もっとも得点が高いプレイヤーの勝利です。
Ostia Expansion PIRATESで加わる要素
Ostia Expansion PIRATESの拡張セットを入れることで、以下の要素が新しく加わります。
出身地と支援者
準備時に各プレイヤーに出身地カードと支援者カードが2枚ずつ配られます。
出身地カードには、資源をより得やすくする効果があります。追加で資源をもらえたり、条件を満たすことで資源がもらえたりします。
支援者カードには、追加の勝利点の条件が書かれています。さらに支援者によってはゲーム中にさまざまな効果も得られます。
どちらのカードにも汚名が設定されています。汚名はマイナス点で強力な効果なカードほど汚名の数が多くなります。中には汚名が0のものもあります。
汚名
新たなリソースとして汚名キューブが登場します。
汚名キューブは1つにつきマイナス7点です。ゲーム中、7金を支払うことで汚名返上を1回できます。
汚名は出身地と支援者を選んだ時点で負うことになり、ゲーム中のイベントでも増えることがあります。
武器
新たなリソースとして、武器が登場します。
交易アクションの際に購入でき、海賊と遭遇したときに必要になります。
海賊船
メインボード上に海賊船コマが存在します。
海賊船コマがあるところを通過、または停止する場合には海賊を撃退しなければなりません。海賊を撃退すると、宝箱が得られます。
海賊は撃退されてもボード上から取り除かれないため、それぞれのプレイヤーで撃退する必要があります。
兵士
新たなフリーアクションとして兵士の雇用が登場します。
規定のコストを支払うことで、兵士が雇えます。兵士を雇うと、海賊を撃退する際に必要な武器の数が軽減されます。また、兵士の数が多いほど、宝箱の得点も高くなります。
イベント
一定の数の宝箱が獲得されると、その手番の終了時にイベントが発生します。
イベントタイルに描かれた条件を最多で満たしていれば汚名返上ができ、最少ならば汚名を得ます。
使用するイベントタイルはゲーム開始時にすべて公開されています。
ローマ市街地
建築によってメインボードから建物コマを取ったとき、個人ボードに配置する代わりにローマ市街地ボードに配置することができます。
ローマ市街地ボードに配置することで、即時効果やゲーム集用事効果が得られます。
新しい終了条件
基本ゲームの5つの終了条件に、以下の1つが加わります。
・イベントボード上の宝箱がすべてなくなった
Ostia Expansion PIRATESを遊んでみた感想
今回は2人で遊び、ルール説明からプレイ終了まで3時間弱でした。ルール説明は基本から拡張まですべてを通して行っています。
まず大きな変化が出身地と支援者です。
これは言わば個人能力のようもので、各プレイヤーごとに非対称な能力を得ます。支援者は得点条件が書かれているため、ゲームを進めるためのとりあえずの方針となります。
たとえば、今回は「自分の建築ディスクがある交易港タイルの数によって○点」という条件だったため「とりあえずどんどん建築していくか」という方針になります。達成できない場合のペナルティはないため、無視して進めることも可能です。
Ostiaでは最初からすべてのアクションが選択できるため、どこから取り組めばいいのか迷ってしまうことがあります。
支援者カードがあると、とりあえずその方面でアクションをしていけばいいという方針が決まるため、初回でもわかりやすいです。
出身地も条件を満たすことで資源が得られるため、そのアクションを選ぼうという方針になります。
海賊船は、かなり厄介な存在です。
すべてのルート上に海賊船が存在するため、船を進めるためには武器が必須です。武器は交易アクションで入手するため、しっかりお金を貯め、なおかつ交易アクションを選ばないと先に進むことができません。
この手間が加わった分、ゲーム展開は基本ゲームより遅くなりそうです。
ただ海賊船はデメリットになるだけでなく、新たな得点となる宝箱が得られるため、総得点は基本よりもアップしそうです。
イベントの発動条件が残り宝箱の数になっているため、どのタイミングでイベントが起こりそうかしっかり見ておく必要があります。
イベントで最多ならば汚名を返上でき(+7点)、最少なら汚名を負うことになる(-7点)ため、1回のイベントで14点差がつきます。
すべてのイベントで最多を取るのは難しいですが、かといってすべてで負けていると、どんどん得点差が開いてしまいます。そのため、イベントにより、インタラクションが増したように感じました。
ローマ市街地は悩ましさがさらに強くなります。
建築のアクションを行った場合、建物タイルを個人ボードに置きます。それにより、追加で資源がもらえるようになったり、コストが軽減されたりします。
建物は好きな場所から置けるため、これだけでもどこから置こうか悩ましいのですが、ローマ市街地が加わることで、さらに選択肢が増えます。
個人ボードに置いた場合は、基本的に永続効果で、ローマ市街地の場合は即時効果か終了時効果です。そのため、タイミングによってどちらを選べばいいのかが変わってきます。
さまざまな選択肢が増える拡張セット
Ostia Expansion PIRATESを遊んでみた感想としては、さまざまな選択肢が増えるため、それにともなって悩ましさも増した印象です。
とくに出身地と支援者は、とりあえずの方針となるため、初プレイでもあったほうが遊びやすいのではと思いました。
今回わたしは「とにかく交易港を建築する」ことと「いち早くポンタ船を建てる」ことが方針でした。
個人ボードのマンカラには通常の船コマ(コビタ船)と大きな船コマ(ポンタ船)が存在します。ポンタ船は資源のカウントをする際に2としてカウントします。たとえば、木材のエリアにコビタ船2つとポンタ船1つがあれば、木材が4得られます。
わたしが選んだ出身地はポンタ船を3としてカウントするため、より多くの資源が得られるようになります。それを活かすために、できるだけ早くポンタ船を建てることが目標でした。
このように自然とやることが決まっていくため、出身地と支援者はゲームを進める上でのとてもいい要素だなと感じました。
ちなみに相手が選んだ支援者は「船コマが6個以上の区画を選ぶと汚名返上を1回実行。汚名がなければ褒章2とアンフォラコマ1個を獲得」という、かなり強力な効果でした。そのため、初期汚名が4とハイリスク・ハイリターンな仕様になっています。
この場合は、いかに同じ区画に船を集めていくかがポイントになるため、こちらとはまったく違った進め方になります。
今回、ゲーム終盤で相手の汚名がなくなり、ようやく強力アクションを打てる状態が整いましたが、イベントによって再び汚名を取らされ、立て直しを余儀なくされました。
その間にわたしが褒章を取って終了トリガーを引いてしまい、ゲーム終了に。
終盤は明らかに資源の産出量に差が出ていたため「だいぶ離されてそうだな……」と思っていたのですが、褒章を取りきって得点倍率を上げたため、結果数点差で勝っていました。
ボードゲームに慣れていればあったほうがいい拡張セット
Ostiaは基本ゲームだけでも十分に悩ましいゲームでしたが、拡張セットが入ることで選択肢が増え、さらに悩ましさが増しています。
ルール量はそこまで増えるわけではないため、ある程度ボードゲームの経験があれば初回から入れてもいいのではと思います。
とくに出身地と支援者はゲームの指針となるため、あったほうがわかりやすいです。
イベントによるインタラクションも増すため、よりゲーマー向けの仕上がりとなっています。
すでにOstiaをプレイしている人はもちろん、まだOstiaをプレイしたことがない人にも試してほしい拡張セットです。
Ostiaの拡張セット「PIRATES」は2024年2月27日からkickstarterでクラウドファンディング開始予定です。
タイトル | Ostia: Pirates Expansion |
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発行年 | 2024年 |
プレイ人数 | 2~4人 |
プレイ時間 | 100~120分 |
デザイナー | Totsuca Chuo |
BGGリンク | Ostia: Pirates Expansion | BGG |